ルソーという画家を題材にした美術ミステリー ー 楽園のカンヴァス
アンリ・ルソーを巡る絵画ミステリー
この作品は未発見のアンリ・ルソー作品の真贋を巡って、2人のキュレーターが批評で争うといった、絵画を題材とした一風変わった趣向のミステリー調の物語です。
この作品には、アンリ・ルソーをはじめ実在の有名画家が多数登場します。
特に、ピカソとルソーとの交流についてを中心に物語は展開していきます。
アンリ・ルソーの魅力
そもそも、アンリ・ルソーという画家は以前から好きでした。
以前、ポスト印象派展で初めて彼の「戦争」を目にして以来、素朴で力強い彼の絵には興味がありました。
40代から画家を志し、生前はほとんど評価されることもなく亡くなったということは、その後すぐに調べて知りました。
幼稚な技法と素朴な表現は、そこからくるのだろうと勝手に納得しましたが、それが逆にこの絵の魅了になっているのが不思議です。
「夢」という作品
この小説の中では、表紙にも使われているMoMAの「夢」という作品を中心に話が進んでいきます。
自分はこの絵を実際に見たことはないのですが、見るにルソーらしいすばらしい絵です。
深々とした緑のジャングルと何とも言えないライオンの表情、決して写実的ではないのだけれど魅力的な裸婦の姿。
いつかニューヨークまで見に行きたい!
( ↓アンリ・ルソー「夢」)
キュレーターのお仕事
この小説で、もう一つ注目すべき点はキュレーターの役割。
キュレーターという職業の人間が何をしているのか、またどういった駆け引きのもと企画展で世界中から傑作の数々を集めてきているのか。
交換条件で絵画を貸し借りし合うため、どうしても弱くなってしまう日本の美術館。
そして、新聞社との関係。
非常に興味深い内容でした。
小説としてなかなか面白いばかりか、絵画と美術館の関係をかいま見ることのできる作品でした。
また、ルソー作品が来日した際には、ぜひ見に行きたいと思います。